朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

「どやった?」

「意味わからんかったけど、面白かった。けど、寒かったわ」

「おれも。ほれ、靴下」

「ハハハ、おとーさん、分厚いの履いてんねんなあ」

「冷房きついからなあ。ディカプリオ、ようやってたけど、ブラッド・ピットのほうが役としては得してたな」

ブルース・リーがやられて、かっこわるかったな。ちょっとふざけてたみたいやけど、ほんまはあれがほんまなんかな。けど、ファンが観たら怒るで」

「おとーさん、観ててわかった?」

「わかったって、なにが?」

「映画の中身」

「いや、おれもようはわからんかったけど、それなりにおもろかったな」

「どんなとこが?」

「いやあ、おれらがまだ中学か高校生のころやから1960年代のころやな。テレビそのころはまだ白黒やったと思うけど、『ララミー牧場』とか『ローハイド』とか『コルト45』とか、『ボナンザ』いうんもあったな。あのころ西部劇、ようやってたからなあ。憶えてるか?」

「憶えてるよ。『ララミー牧場』のロバート・フラーのファンやったもん」

「淀川さんや。よう言うてたもんなあ。あのころのハリウッドを映画にしたんやな」

「ディカプリオとブラッド・ピットは友達みたいやったけど、ほんまはディカプリオがブラッド・ピットを雇うてんのやろ?」

「そうや。ブラッド・ピットはディカプリオ専属のスタントマンやからな。けどアメリカは俳優が個人で契約するんやなあ」

「そうと違うの?」

「日本やったら、会社やからな。東映とか、日活とか」

「ああ、そうなん」

「ギャラが違うからな、日本とは。けど、ディカプリオも西部劇がだんだん流行らんようになって主役から悪役専門みたいに落ち目になってからは、ブラッド・ピットとの契約を解除しよか、言うてたやろ」

「そやったね。けど、いややいやや言うてたマカロニウエスタン、しぶしぶ承知したんかな、うまいこといって、嫁さんまで連れて帰ってきたやないの」

「あれには笑たな。あれ、イーストウッドやがな。スティーブ・マックイーンもそっくりさんが出てたやろ」

「出てた出てた。うまいこといてるもんやな」

「『大脱走』で、マックイーンがやった役をディカプリオがやってたやろ。あれ、カメラテスト演ったいう意味なんやろな。けど、ディカプリオのリック・ダルトンはあかんかったんや」

「おとーさん、映画の題のな、ワンスアポンなんとかいうんは、どんな意味なん?」

「おれも知らんかったからな、調べたんや。おとぎ話で『むかしむかし、あるところに』いうんがあるやろ。あの、『むかしむかし』にあたるんやそうや」

「そんなにむかしむかしの話やないけどね」

「まあなあ。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』いうんもあったやろ?

憶えてるか、ロバート・デ・ニーロ

「観てみらんとわからん」

「これも、いまから100年ちかく昔のアメリカの物語やからな。むかしむかし、になるんやろ」

「わたしらが10代のころのハリウッドが舞台やったら、そのころのテレビとか映画とか、ハリウッドのことをよう知った人が観たらもっとおもしろかったんやろけどね」

「そうそう。そやから、おれらくらいの年代のアメリカ人で、映画やテレビ好きにはたまらんかったやろ思うわ。おれらが気がつかんおもろいとこが色々あると思うからな」

「あのなんとかいうややこしい名前の監督、あの人もわたしらとおんなじ年頃やろか」

タランティーノや。おれもこの人の映画、初めて観たわ。歳ははっきりは知らんけど、まだだいぶ若いんと違うかな」

「若いんやったら、ようあんなんが作れたね」

「よっぽどあの時代が好きなんやろ」