朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

ランドルフ・スコット

「おとーさん、今日のBS、なに?」

「ちょっと待ってよ。西部劇やな。『馬上の男』や」

「だれが出てんの?」

ランドルフ・スコット、知ってるか?」

「知らん」

「1951年公開やから、ママンが5歳、おれが6歳のときの映画や」

「おとーさん、観たことあんの?」

「映画では観た憶えないな、観たかもしらんけど。テレビでは観たかもしれんけど、観てみらんとわからん。ママンは?」

「わたしも観てみらんとわからん」

「BSいうても、おなじ映画ようやるからな。あ、これ観たわ、いうんがあるやろ。マカロニ・ウエスタンなんか『なんとかの用心棒』、もうあんまり観る気せんからな」

「今日の俳優さん、なんという名前やった?」

ランドルフ・スコット。子供のころな、おれが最初に名前覚えた西部劇俳優はこの人やねん」

「そう。おとーさんがよう言うてる、ジョン・ウエインとかゲーリー・クーパーとかよりも前に?」

「そやねん」

「映画観たん?」

「いや、全然憶えてない」

「ふーん、どないして覚えたんやろね」

「うん。これはな、いま思うことやけど、映画の看板あるやろ。いまはもう見ることないけど、昔はどの映画館でも軒の上に、横長の看板が掛かってたやろ。よう憶えてるんは『用心棒』。熊本の市内にある米屋に住み込みで働いてたころ、すぐ近くにいくつか映画館があってな、そのころは日活の小林旭やら宍戸錠やらに夢中やったけど、なんで『用心棒』の看板、記憶にあるんかな」

「そう。よう憶えてんなあ。わたしが憶えてんのは、ポスターとか写真、ガラス張りのショーケースみたいなところに張ってあったわ」

「へえ、フランスでもそやった? おれの田舎でもそやったんや」