朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

落語『蜘蛛の糸』-2

 話がちょっと横へ逸れましたが、私が永いこと会うてないと申しましたのはあの、この巣ですな、網状のあのトンボや蝶なんかが引っかかって蜘蛛の餌食にになるという、あの蜘蛛の巣のことでございますが、まあ、山登りでもすれば簡単にお目にかかれるんでしょうが、気持ちの悪いもんで、山道の藪の中なんか歩いておりまして、急に、顔なんかにベタッと張り付いてあわてるんでございますが、あれは気持ちの悪いもんですな。べたべたくっついてなかなか取れません。しかし考えてみますと、どっちが迷惑かといいますと、相手のほうがはるかに迷惑千万な話で、せっかく一晩丹精してこしらえた住居兼仕事場を一瞬にして壊されてしまうわけですから、蜘蛛にすれば「チェッ! なにしてけつかる、気ィつけて歩かんかい、このスカタン!」てなもんでしょうが。

 えー、わたしの田舎と申しますのは九州熊本でございまして、方言で、蜘蛛のことを「コブ」というておりました。さきほど申しましたハエトリグモはハエトリコブという具合で、巣を張るやつで胴体に黄色い2本の横すじ模様が入ったのをシマコブ、これは正式名称ではコガネグモと言うんやそうですが、わたしたち子供はシマコブと呼んでおりました。他には家の天井裏など灯りが届かないようなところとか、昔の田舎の家のことですから壁など土壁で、その上のほうの薄暗いところで8本の脚を広げて張り付いているのをよく見たものです。けっこう逃げ足の速いやつで、ヌスットコブと言っておりました。盗っ人とはおだやかではありませんが、生息場所が暗いところで逃げ足も速い、というわけでもないんでしょうが、胴体の色は灰色、わたしが付き合うたなかではいちばん大きなやつで、これも正式にはアシダカグモというんやそうで。

 蜘蛛のことなんでコブと言うんか調べてみたのでございますが、まあ簡単に言えば、クモがクボになりクボ、クボ言うてるうちにコブになったという、いい加減と言えばいい加減な話でございますが・・・・。(つづく)