朝ぼらけジジイの寝言つれづれに

夜中に目が覚めて、色々考えることがあります。それを文章にしてみました。

落語『蜘蛛の糸』-38

 まだまだ、続続とやってまいります神々のお噺でございます。ご存じの七福神はおめでたい宝船での参上でございます。この宝船、どこかの港に着いてそこから駕籠が馬に乗って宴会場まで来るのかとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、この宝船、空飛ぶ宝船なんでございますので、ドアツードア、宴会場の広大な広場のどこでも好きな所へ着陸できるのでございます。

 さすが七福神、レディファーストを心得ておりまして、宝船より、まず最初に降りて参りますのは弁財天、弁天さんでございます。続いて恵比寿、大黒、毘沙門天、福禄寿布袋、寿老人と、7人の神様、ご一同ニコニコと笑顔で顔色もよく健康そのもの、弁天さんなどはとてもそのお歳には見えない若々しで、艶やかな衣装に身を包んで、船の上から投げキッスしながら降りてこられたのでございます。

 この、100年に一度開催される天国・極楽合同賢人会議は、各自持ち寄りが決まりでございますから、七福神の皆さんもそれぞれに宝船に積んでございます荷が、この船の乗組員によって降ろされます。

 ご存じえべっさんは鯛でございます。この日のために毎日海へ出て釣り三昧、もう顔も腕も焼きすぎたトーストのように真っ黒けでございます。この方とは、めでたいのたい(鯛)がセットになっておりますので持ってこられたのは鯛だけ、鯛いっぽんでございます。他の高級魚、ヒラメとかカンパチ、ブリ、GTと呼ばれているロウニンアジなどが釣れましても、惜しげもなくリリースなさいます。

 またご存じ大黒様はウサギの毛で織った空気より軽くて暖かいという羽衣を、いつも肩にかついでおられるあの袋に3800袋、これは女性の神様にプレゼントされるものでございます。

 これら諸々の荷が宝船に備わっておりますクレーンによって3日3晩、休みなく降ろされたのでございます。

 ところが大黒様、これは実は秘密で、それもトップシークレット、このことが外に漏れますとかくゆうわたしも命の保証がないという・・・とは申しましてもわたしもこれが仕事、以前は『週間文春』で政界のスキャンダルをスクープしたこともございます。命を賭けております仕事ですから申しますが、大黒様、別にもうひと袋、用意されておるのでございます。これは常に肌身離さず肩に担いでおられますので、他の荷のようにクレーンで降ろされるのとは別な特別のものでございます。

 この袋のなかを特別に「ノゾキミ、ノゾキミ」してみましょう。きれいな箱10箱ほどございまして、その箱のなかには、1枚1枚がそれぞれ赤、橙色、黄、緑、青、藍色、紫のレインボーカラー7枚がワンセットになりました羽衣、これは他の女性の神々へ贈られるものとは違いまして、1匹のウサギから3グラムしかとれない、プレミアム羽毛で織られたという特別の品なのでございます。

 これら3800袋というウサギの毛は、以前、大黒様が因幡の国を通りかかれて折り、ワニによって丸裸にされてシクシク泣いていたウサギをあわれに思い、助けられたことがございました。そのお礼にと、そのウサギの一族から毎年決まって贈られてきたもの、なのでございます。ネコと違って、イヌは3日飼ったら恩をわすれぬと申しますが、ウサギも同じなのでございます。

 いましがたトップシークレットと申しましたが、ではその特別製の羽衣はだれに贈られるのかと申しますと、もうお気づきの方もおいでやと思いますが、その通りで、富士山とともに世界自然遺産に登録されました美保の松原でお馴染みの、天女様へのプレゼントなのでございます。

 なにを隠そう大黒様、若いころより日本国中、困っている者はいないかと歩いて回っておられるなかで、美保の松原の空に漂う天女に出会い、一目で恋に落ちられたのでございます。それにしても大黒様というお方は、見た目以上にロマンチストなのでございます。(つづく)