来年の花見
「オーイ! ママン、ママン喜べ!」
「なんやのん、おとーさん、玄関前から大きな声して。ここ船着場やないよ」
「船着場? なんやそれ?」
「わからんの?」
「わからん?」
「わからんかったら、それでええやないの」
「コケるようなこと言いな」
「言うたるわ。渡し船に乗り遅れた黄門さん一行で、八兵衛が大きな声して、出てった舟呼び戻してるいう、シーンやないの」
「見過ぎ見過ぎ」
「どこ行っとったん。あれ? 思たら、知らん間におらんやろ」
「郵便局や、郵便局」
「郵便局て、あんた? 振り込んだんちゃうやろね」
「ちゃうちゃう。反対反対、もろてきたんや」
「もろてきた? なにを?」
「おカネ」
「おカネ、なんぼもろてきたんよ。わけわからん、変なおカネとちゃうやろね」
「大丈夫や、国からくれたんやから」
「国からておとーさん、年金は15んちやで。それも来月やないの」
「知ってる。年金とはちゃう、花見のおカネ、5000円や」
「花見のおカネ、なんやのんそれ。花見て、菊の花でもみるんかいな」
「いや菊やない。来年春のサクラや」
「来年の春、ハハハ、来年の春の話、笑うわ」
「なにがおかしいんや」
「いやあ、オニが笑うまえに笑うてんねや」
「ウソや思てんねんな。ほれ5000円、郵便小為替で送ってきた。これが送り状や」
「国から送って来るやなんて、意味わからんわ。なにかしたん?」
「おとといのブログでな。阿倍首相肝いりの花見の会、5000万円使うてやるいうんでな、オレもヨメさんも、ヨメさんて、ママンのことやで。ウン、わかってたらええんや。それで、結婚50年やけど1回も花見行ったことない、冥土のミヤゲにいっぺんだけでええ、花見がしたい、5000万円も使うんやったらその万分の1でええ、5000円欲しい、あかなんだらその半分でもええ言うて、ブログに書いたんや」
「なんやのん、おとーさん、品のないことして」
「半分でもええ言うたけど、そっくり送ってきたわ。あれが効いたかな」
「なんやのん、あれが効いたて?」
「いや、もうそない世の中の役に立ってるわけやないジジイとババアやさかい、ふたりで1票もありゃそれでええんやろけど、2票ある、いうたんが効いたんかな、思て」
「そんなことまで書いたん。おとーさん、買収とかで逮捕されんで、知らんけど」
「そんときゃそんときや」
「あきれるわ」