『男はつらいよ50』
「50年で50作目になるんか」
「なんのこと?」
「男はつらいよ」
「また出来たん」
「そう、監督の山田洋次も何日かまえに『徹子の部屋』に出てたんやけど、もう80は過ぎたんとちゃうかな」
「元気やね」
「最後やな。また他の作品はやるかも知れんけど、寅さんはこれでオシマイやろな」
「渥美清いてないのに、どんな映画になるんやろ」
「どんな映画になるんやろな。寅さん本人がいてないのに、けどプロやからな。なるほどな、いうんが出来ると思う」
「もうやってんの?」
「正月映画や」
「来年?」
「いや12月の末にはやるやろ」
「渥美清はおらんようになったけど、『さくら』の倍賞千恵子、このまえなんかのテレビでチラッとみたけど、おばあさんになってもうたやんか」
「お互いさんや。テレビでは長山藍子がやってたけど、この人のさくらも良かったけどな」
「観てない。結婚してた?」
「してない。オレな、なんで妹の名前がさくらなんか、考えたことがあるんや」
「なんでなん」
「なんでて、別に理由はないんやけど、そう思てしもたから、そう思たんや」
「それで、なんかわかったん」
「寅さんの仕事が、なんて言うか、あんな仕事・・ちゅうより商売やな、『ちゃらちゃら流れるお茶の水、粋なねーちゃん立ちションベン』なんか言うて客集めるやろ」
「汚いなおとーさん。他にもセリフあるやろ」
「最初のころな。知ってると思うけど、弟分にノボルいうんがいたんや。知ってるやろ?」
「知ってる」
「イナカの親元に帰れ、言うて最後は追い返されたんやけど、商売しててなかなかお客さんが集まらんときはノボルが『サクラ』になるわけや」
「ああ、そういうこと」
「そう、それで商売の関連で、妹の名前がサクラになったんかなあ、そう推理したわけや」
「推理ておとーさん、タイソやな」
「寅次郎もオレの推理では寅どし生まれの次男坊で寅次郎。寅さんの話やとオヤジが酔うて帰ってきた晩にデケタんが寅、フーテンの寅やからな。長男は初めての子ォやから大事にされるけど、次男坊はどっちかいうとあんまり大事にされんからな。歌にもあるやろ『次男坊鴉』いうんが」
「知らんわそんな歌。おとーさん長男やろ」
「古い歌やからな」
「大事にされたんと違う」
「大事にされたな」
「それでわがままなんや。付き合うてたとき『長男やろ』言うて、おとうちゃんおかあちゃん反対してたんやけど、そんなこと考えんから」
「若さやな。失敗した思てるやろ」
「いまさら言うてもしょがないやろ」