年の暮れに見たユメ
「初夢やったらよかったんやけど、もう早々と見てしもうた。らしいかどうかわからんけど、まあ初夢を年末に見た、いうことにしとくわ」
「どんなユメ見たん? おとーさん気が早いからな」
「なんでもスピード時代やからな。歳も歳やし。初夢いうてゆっくりもしとられん。いまのうちに見とかんと、年内もつかどうかわからんからな」
「アホなこと言いな。そないなことばっかり言うてたら、バチ当たって、ホンマになるで」
「ホンマやな。黙っとこ」
「ユメのハナシ、どないなったん」
「キムジョンウン、知ってるやろ?」
「北朝鮮の? 知ってるよ」
「あの人のユメ見た」
「めずらしいな。いま人気やから」
「まあ、人気いうてええかどうか、わからんけどな」
「そしたらどない言うの?」
「まあ、人気でもええけどな。悪名高き人気もんということにしとこか」
「そないな言い方、聞いたこともないわ」
「それがな、ええ人になってはるんや」
「だれが?」
「ジョンウンさんがよ」
「ホンマかいな」
「ユメやからな」
「ええ人て、どないなったん?」
「東京証券取引所、知ってるやろ?」
「証券取引所って、株のこと?」
「そうそう。そこで株式の新規公開をやってんねん」
「だれが?」
「言うたやん」
「キムジョンウン?」
「そうや。それをテレビでオレが観てる、そんなユメや」
「よう、そないなユメ見たな。アタマんなかどうなってんの」
「どうなってんのって、オレも見たことないからな」
「ユメはそれだけ?」
「いや、キムジョンウン、鐘カンカン鳴らして、回りのもんが手ェパチパチ鳴らして、ご本人は満面の笑みや」
「ふーん。なんか、そないなこともあるんやろか?」
「ユメや、言うてるやろ。その後、取引所ビルのバルコニーみたいなとこにアベさんとふたり手ェつないで、バンザイしてはんねや」
「へええ、なんかオモロイな」
「そやろ。ところがな、株のほうはえらい人気でなかなか値がつかんのや、それが何日もな。値幅いっぱいの
「食べるもんの食べんと、頑張ってはるらしいな。ニュースで言うてたよ」
「それでな。テレビのインタビューに答えて、株式を新規公開したんは、このおカネで国民を豊かにするんが目的や、言うてな」
「えらい、ええ人になってはるやん」
「そやろ。年の暮れに見たユメやけど、初夢いうてもええんとちゃうか」
「そうなったらええけどな」
「そやな」