礼金
「借りたらしいな」
「おおきに。お前が教えてくれた周旋屋行って決めた」
「ええとこあったか?」
「うん駅近や、10分もかからへん」
「よかったやないか」
「うん、よかったんはよかったんやけどな。ちょっと気になることがあってな」
「なんや?」
「礼金のことやけどな」
「礼金がどないしたんや」
「いや、礼金いうからな。『借りてくれてありがとう』言うて、オレが貰えるんか思て喜んでたらちゃうねんな」
「知らんかったんか、お前」
「そやねん。意味わからんやろ。借りるオレのほうが『助かりました。ありがとう』言うて菓子折のひとつも持って礼言うたり、まあカネの300円も包んで礼いうんが礼金や思てたんが、むこうからオレに礼金やいうて要求するんはリクツに合わんやろ」
「リクツはそうやろけど、これ決まってることやから、礼金でええんちゃうか」
「どうもしっくりこんねんなあ。なんかしら上から目線で『貸してやってるやろ』みたいな、そやさかい『礼金出すんが当然』、そやさかい礼金でどこが悪いみたいな、まあカネ取られるんはしゃあない。けど、オレとしたら礼金やのうて別の名目に変えて欲しい。オレはその気もないのに、カネ取るやつのほうが勝手に礼金やなんて、『お前はオレか』どないなつもりでわけのわからん名前つけたんやろ。それがなんの疑問も感じらんと通用してるんがオレには理解でけへん」
「まあまあ、そない怒りな。仕組みがそないなって、それで回ってるんやから言うてもしゃあない。言うたら向こうも『それやったら借りんかったらよろしい』そないなるやろ」
「それがハラ立つんやな。これから外国人もようけ来て『借りたい』いう人もおるやろに無理やで。理解でけへんのとちゃうか」
「しゃあない。郷に入ればなんとか言うやろ。それにもう大勢の外人それで借りてるやろ」
「納得してないと思うけどな。無理が通ればなんとやら、そや! ええこと考えついたわ」
「ええことてなんや?」
「借りるほうやからあかんねや。貸す側に回ってふんだくってやろ」
「えがつないこと言うてるな。貸す家あるんかい」
「ない!」