我が家の壁掛け時計
「4分遅れてるからそろそろ仕事行く準備してよ」
と、ママンが言う。
我が家の壁掛け時計。
「さあ?」
とママンが言う。
乾電池はいつ替えたの? と訊いたから。
ずっと4分遅れたままの我が家の壁掛け時計。
これって正確なんだよな。
何日経っても遅れも進みもしないんだから。
ママンが言う。
「外して合わせようか」
とんでもないそのままでいいよ。折角機嫌良く4分遅れで役目を果たしているのに、たった4分がた歴史を遡らせたところで。
それより、外して合わせたところで、眠った子を起こすようなものではないのか?
きっちりテレビの時刻に合わせて伴走するとは限らないんじゃないか?
けど
と、ママンが言う。
「乾電池切れたときはどうするの?」
そのときはそのとき。とは言うものの。少し怖いような気もする。
我が家の壁掛け時計。
きっちり正確に、4分遅れでリズムに乗って時を刻んでいるということは?
ひょっとして? 気づいていないのかも知れない。
乾電池の存在を。
思い出した! ママンと結婚したてのころ、チチが。
我が家の壁掛け時計。