續 もいくつ寝ると
「も~いくつ寝ると~おしょおがつ~」
「やめてよおとーさん、まだ朝の6時やで。わからんわ、神経」
「迷惑かな」
「決まってるやないの。お隣さんまだ寝てはるかもしれんのに。だんだんひどなるな」
「切れてるんやろな、神経。恥も外聞ものうなったな。ヨッ!後期高齢者!」
「やめて、言うてるやろ。そろそろ引退するか、ニンゲン」
「そやなあ、それでもええけど、声だけはまだよう出るからな」
「それが迷惑や、言うてるやろ。わかってないんかいな、ほんま。知らんけど」
「コマ回し、タコ揚げ、羽子板、歌にあるみたいなんが当たり前やったのに、生き残ってるんはいくつあるやろ」
「スマホの時代やからね。外で遊ぶなんてのうなったんとちゃう」
「そやろなあ。タコ揚げ羽子板なんかは出来んことないやろけど、コマ回しはちょっと無理やろな」
「なんで?」
「地べたがのうなったからな。どこもかしこもコンクリとアスファルトで固めて、ラムネん玉なんか地べたにちっちゃい穴いくつか開けてそこへ入れるいうんをやってたけどそんなこともう出来へん。穴開けよう思たら、あの線路工夫さんがエンヤ~コ~ラ声合わせてやってたツルハシ持ってきて開けなならん。そら遊ばんわな」
「そら遊ばんわなて、時代やからどうしようもないんちゃう。学校の教科書に載ってたムカシの子供なんかタケ笹に乗ってお馬さんやってたん、見たこと憶えてるわ」
「そやなあ。オレも見たように思うけど、そないな幼稚な遊びやったことないな」
「そうと違う。いまの子供、タコ揚げ羽子板コマ回しなんて、幼稚な遊びに思うんとちゃうかな。知らんけど」
「けど、いま思たら楽しかったで。いま思うから楽しかった言えるんやけど、あのころは遊びに夢中やからな、楽しいなんて考える余裕もなかったな」
「幸せな時代やったんやな」
「思い起こせばやけど、あれ以上の幸せはないのかもしれんな」
「そおお? おとーさん言うてたで結婚したとき。これ以上の幸せはない、言うて」
「そうか、言うてたか。どないかしてたんかなあ」
「アクマが乗り移ってたんと、ちゃう」